第32回公演『女性映画監督第一号』出演者コメント
2025年2月に吉祥寺シアターにて上演する、第32回公演『女性映画監督第一号』の出演者が、決定しました。
万里紗、佐乃美千子、内田健介、藤井咲有里、岡崎さつき、釜木美緒、内田靖子、峰一作、武田知久
以上の9名です。
出演者のコメントは下記の通りです。
万里紗(坂根田鶴子役)コメント
最近、性別記入欄に「無回答」という選択肢があると、躊躇いなくそれにチェックを入れることが増えてきました。“女”優をやってはいるけれど、女というジェンダーがアイデンティティの根幹であったことのない私にとって、けれども逃れられない「女」にまつわる様々な規範と向き合い続ける坂根田鶴子さんの人生は、台本のページを繰るごとに「分かるー!」と絶叫したくなるものがあります。二元的な記号に世界を押し込めるのではなく、もうちょっとフクザツでステキでセンサイな未来の、平和の種を見つけるために。彼女の人生と彼女の「性」に、カンパニーの皆様と共に向き合って参りたいと思います。ぜひお越しください。
佐乃美千子(千枝子役)コメント
劇団員の佐乃美千子です。劇団員になって2作品目の今回、私は溝口健二の妻・千枝子を演じます。歌あり、踊りあり。私の俳優人生における、新たな挑戦ばかり!千枝子のキャラクターも今まで頂いたことのない役柄で、今から共演者の皆さまと作品を作っていくのがとても楽しみです。日本映画界のレジェンド溝口健二監督が映画で描いた女性像さながらに「強く、逞しいのに沼底に堕ちていく」千枝子夫人。その魅力に、チャレンジしたいと思います。
内田健介(溝口健二役)コメント
溝口健二役をつとめます内田健介と申します。今回参加するにあたって、坂根田鶴子さんの生涯を描いた書籍を読み、溝口健二への、映画への想い、女性であるが故に受けた業界での差別、そして戦争、満州からの引き揚げと彼女の壮絶な人生に心を動かされました。2024年の今、日本のジェンダーギャップ指数は156カ国中116位とかなり低く、いつまでも改善されないままです。僕自身も女性の友人達がこの問題で苦しんでいるのを何度も目の当たりにしてきました。演劇に社会を変える力がどれだけあるかわかりませんが、この舞台が何か考えるきっかけになればと願います。
藤井咲有里(猫河米:若手映画プロデューサー役)コメント
鈴木アツトさんの戯曲は、人物の魅力やテンポの良さ、世界の広がり方のおもしろさがありつつ、扱うテーマや題材がいつも興味深くて私は個人的にファンなのです。ですから、またこうしてご一緒できることを心から嬉しく思っております。 訳あって私自身フルプロダクションの舞台に立つのは約2年ぶりです。今からもう既に緊張しておりますが、見応え・嚙み応えのある作品を皆様にお届けできるよう、これから始まる創作の時間を、座組みの皆さんと共に日々充実させて行きたいと思います。 私が感じた、新しい世界への視野の広がりを皆様にも味わって頂けたら嬉しいです。どうぞ、ご期待ください!
岡崎さつき(犬巻麦:若手映画助監督役)コメント
出演が決まり、一番最初に読んだ参考資料はある女性映画監督の自伝でした。昔、大手映画会社の演出部に入るためには「大卒・男子」という条件があったそうです…なんじゃそりゃ!?今の感覚からするとありえないことです。今となっては、映画界のみならず社会的に女性が活躍することは当たり前ですが、そういう世の中にするために強い意志を持って戦い、生き抜いた女性がたくさんいたということを改めて考えさせられました。私が演じる犬巻ですが、彼女は世の女性の怒りと叫びの化身のような人です。生きる原動力は”怒り”。彼女のセリフを口にすると、私自身が「しっかりせい!」とお尻を叩かれているような、そんな気持ちになります。
釜木美緒(登美島福子:映画編集技師役)コメント
出たいと思った作品に関われる幸せを噛み締めています。オーディションの際に読んだシーンで、作品を撮る上での視線を向ける者と向けられる者の権力関係について、とても胸に刺さるセリフがありました。創作をする上でこれから絶対に忘れずにいようと思える強い言葉でした。今回は、実際にいらっしゃった方がテーマの作品です。私が演じさせて頂く役も、モデルになった方がいます。一つ一つ丁寧に読み解いて、稽古場で皆様と積み上げていきたいと思います。今回初参加でドキドキがとまりませんが、精一杯務めさせていただきます。よろしくお願い致します!!!
内田靖子(包琳琳:中国人編集助手役)コメント
シンプルで力強いタイトルと、創作を共にする心強いカンパニーの皆さまとの出逢いにわくわくしています。私が日々の生活の中で享受している様々な権利や価値観は、かつて誰かが闘い勝ち取ってくれたものなのだと近頃よく考えます。世界の情勢や”当たり前”が目まぐるしく変化していく中で私は何を勝ち取り何を未来に残すことが出来るのだろう。そんなことを考えながらこの作品に誠心誠意挑みたいと思います。
峰一作(サイレント映画の幹部男優役)コメント
俳優としてのキャリアをスタートさせて10年が経ちました。いい事ばかりではなく、演劇を憎らしく思う事も多々ありました。今回、出演が決定するまで二回の実技のオーディションがあったのですが、自分でも驚く程強気で挑みました。なんだか、この10年ペコペコしながら俳優を続けてきた様な気がして、これまでの自分が恥ずかしくなりました。演劇を憎らしく思ったり、ペコペコしながら生きるのもいいけど、そろそろ自分の歩んで来た道に責任を持ちたい 、そんな気持ちでいます。舞台に立つ以上、不安はいつもありますが、鈴木さんの作り出す劇世界を僕は信頼しています。だから、楽しみの方が大きいです。劇団印象の演劇を楽しみ尽くしたいと思います。
武田知久(千枝子の愛人役)コメント
劇団印象、2度目の参加となります。前回は文学と権力にまつわるハードな物語でした。今回は、映画について。映画が芸術として認められようとする時代の、眼差しをめぐるお話です。場所も時代も隔たっていながら、2つの世界は何か繋がりがある気もします。すべての歴史がどこかで触れ合い重なるように。そして今回は、女性の存在が描かれます。20世紀に彼女たちがどのように生きていたのか、どう生きたかったのか、具体性をもって想像していきたく思います。どんな人物も歴史のために存在するわけではなく、日々の暮らしと霧の中にある未来、そして周りのひととの関わりのなかでなんとか藻掻いている、そんなことを忘れぬよう、臨みます。